原因不明の痛み
彼女の悩みは10年以上も続く原因不明の身体中の痛みでした。
「お医者さんはストレスが原因と言いますが、私には良くわかりません。
夫はとても優しいし娘たちもとても良い子なんです。
ストレスって、この痛みがストレスに感じるくらいで、何もないのです。」
朝起きると毎日、今日はどこが痛いのか確認することを日課にしている彼女は
確かにとても悩んでいました。
痛みは「まぼろし」?
初回の治療でいくつかの検査を終えて、私は彼女にこう伝えました。
「大丈夫ですよ。この痛みは治ります。」
「本当ですか?でも、こんなに痛いしずっと治らなかったのに、先生なぜ治るとわかるんですか?」
「その痛みは、幻だからです。」 「ま、幻ですか?本当に?」
彼女は半信半疑です。でも彼女の身体は何も悪いところはありません。
と、いうことは彼女が「痛い」と感じているのは身体に異常があるわけではないのです。
脳が勝手に作り上げている痛み
それは、幻です。
なぜそんなことが起こるのでしょう?
痛みを作る心の仕組み
数回の治療を経て、彼女の痛みは軽減しても完全に消えることはありませんでした。
「先生に痛みは幻と言われて、確かに私はいつも痛みを探していることに気づきました。
マシにはなっているのですが、まだ痛いです。本当に治るのでしょうか?」
「あー、本当は治りたくないんやね。」
「そんなことないです!!治りたいです!!」
「でもね、あなたの潜在意識は治りたくないと思ってる。だから痛みは治らない。」
「どういうことですか?」
「痛みがある方が都合が良いのかもしれないね」
心理学者のアドラーは「感情には目的がある」と言います。
私は「身体症状には目的がある」と感じています。
言い換えると、「痛みがあることにメリットがある。」「痛みがあると都合が良い。」
そんなことをクライアントに伝えると怒り出す人もいます。
「こんなに私は苦しんでいるのに、なんてひどいことを言うのか!!」
そう、苦しんでいることこそが、その人にとっての目的なのです。
意識では痛みや苦しみは嫌に決まっているのに、潜在意識では望んでいる。
そんな不思議なことが起こるのです。それはなぜでしょう?
痛みはメッセージ
私は痛みや病気はメッセージだと考えています。
クライアントが本来の自分らしい生き方をするために、何かを伝えようとしている。
彼女の潜在意識はなぜ痛みを手放さないのか?何を伝えようとしているのか?
ここが彼女の痛みの根本原因です。その答えは潜在意識にあります。
ヒントは彼女の幼少期にあります。
彼女は幼い頃、身体が弱かったそうです。お母さんはとてもそのことを心配していました。
「ダメよ!そんなことしたら明日しんどくなるから」
「早く帰りなさい!風邪を引くわよ!」
そして翌日に体調が悪化したら
「ほら、お母さんの言った通りでしょう!だから言ったじゃない!」
いつもそんな言葉を、お母さんからシャワーのように浴びていました。
「あれ?お母さんって誰かにそっくりだと思いませんか?」と私が聞くと
「あっ!もしかして私のことですか?」
彼女は気づきました。自分で自分に対して、同じ言葉をかけていることを。
「こんなことしたら、また痛みがひどくなる。」
「ほら、また痛くなった。やっぱり私は無理してはいけないんだ。」
そう。
彼女は自分の心の中に心配しているお母さんを作り出していたのです。
もうすっかり健康になっているのに。
痛みがなくならないヒントに近づきました。次はなぜお母さんを作り出すのか?です。
海外旅行前日のショック
つい先日、彼女は海外旅行に行くことになりました。
「いいですね!楽しみですね。」
「いいえ、それが全然楽しみではないのです。なんだか心配で心配で。」
心配や不安は必要ないのに、どんどん膨らんでしまうことがあります。
そんな時には、まず自分の心の中を全部書き出してしまうことが有効です。
早速、書き出してもらった心配ごとリストを見た彼女は
「あぁ。なんだかバカみたいですね。でもわかっていても心配なんですよね。」
彼女は旅行を終えて、久しぶりのセッションを受けに来ました。
「いかがでしたか?旅行は?」
「それが先生、私、旅行の前日にギックリ腰になったんです。まだ痛みがあってつらいです。」
驚きました。
「でも、先生、腰は痛いけど行きたいところはほぼ行けたし、何よりも心配する気持ちの余裕がなくて腰が痛い以外は本当に楽しい旅行だったんです。」
「そうでしたか。でもすごいタイミングでギックリ腰になりましたね。」
「やっぱり、私が痛みを作っているのかなあって思いました。先生の言うことに納得しました。」
彼女はぎっくり腰のおかげで、心配する気持ちを手放して旅行を楽しむことができたのです。滑稽に感じるかもしれません。でも、彼女が旅行を楽しんだのは事実です。
痛みに支配されないで!!
「おかしな話ですが、このギックリ腰の痛みは治すのが勿体無いです。治すのではなく
痛みとお話してみましょう。痛みからのメッセージを受け取るチャンスです。」
彼女が痛みを作っているのは自分だと気づいたことは大きな収穫です。
治療は次の段階に進むことができます。
早速、彼女に彼女自身の痛みと会話してもらうセッションを行いました。
彼女は痛みにこう尋ねました。
「いつまで私の身体にいるんですか?」
すると痛みからのメッセージとして彼女の口からでた言葉は
「痛みに支配されないで!」
でした。他にもいくつか会話をしましたが、ここが一番大切なメッセージとして
私は受け止めました。
セッションが終わって彼女は
「なんだかとてもスッキリしています。痛みもマシになりました。」
清々しい笑顔で、こう話してくれました。
彼女にとっての痛みは、潜在意識に作られた彼女の人生の心の自由に制限をかけている何かです。
彼女が痛みから解放されて、心の自由を妨げる制限を外す時は
もうそこまで近づいています。